造作家具、いくらかかるのか。費用の中身と、先に決めること。

更新 2026.09.03約7分で読めます執筆:WEBライター
壁一面の本棚。ぴったり納まった食器棚。写真で見て、いいなと思う。次に「で、いくらなのか」で止まる。
先に言っておく。造作家具に定価はない。同じ幅の棚でも、素材と作り方で金額は倍ほど変わる。だから相場の一覧を眺めても、自分の家の金額は出てこない。
もうひとつ。造作のほうが高い、とも限らない。高い既製品はいくらでもあるし、やり方によっては造作のほうが安く納まることもある。金額は、何をどう使いたいかを決めたあとについてくる。
ここでは、金額が何で決まるのかを先に置く。次に、既製品と比べるときの考え方。最後に、金額より先に決めることと、迷ったときにどうするか。順に見ていく。
造作家具とは何か。置き家具との違い
造作家具は、部屋の寸法に合わせて作り、壁や床に固定する家具のことだ。本棚、テレビボード、食器棚、机、玄関の靴箱、洗面台。家具屋で買って運び込む「置き家具」と区別して、こう呼ぶ。
違いは、置く場所に家具を合わせるか、家具に場所を合わせるか。置き家具は幅が決まっているので、壁との間に隙間が残る。造作は隙間が出ない。そのかわり、動かせない。引っ越しにも持っていけない。
どちらが上ということはない。動かしたい家具と、動かさない家具がある。それだけの話だ。
作り方は2つある
造作家具は、誰がどこで作るかで2つに分かれる。
- 大工工事 …… 現場で、大工が板を切って組む。壁と一体に作りやすい
- 家具工事 …… 家具屋の工房で作った箱を運んで、現場で取り付ける。塗装や引き出しの精度が高い
同じ図面でも、この2つで金額が変わる。あとで詳しく触れる。
造作家具は、いくらかかるのか
まず、目安として言われている数字を置く。出典の無い数字は目安として読む。自分の家の金額は、見積もりでしか出ない。
場所別の目安
- 飾り棚、小さな収納 …… 5〜20万円程度と言われる
- テレビボード、カウンター …… 10〜40万円程度
- キッチンの背面収納(食器棚) …… 20〜60万円程度
- 壁一面の収納、本棚 …… 30万円から、100万円を超えることもある
幅が広がるほど、扉や引き出しが増えるほど、金額は上がる。ただし面積に比例するのではなく、部品の数に比例する。同じ幅なら、扉が4枚の食器棚より、オープン棚のほうが安い。

費用の中身は4つ
見積もりを分解すると、次の4つになる。
- 材料費 …… 板、扉、金物(丁番、スライドレール、取っ手)
- 加工と組み立ての手間 …… 板を切り、穴をあけ、箱にする作業
- 取り付けの手間 …… 現場で水平を出し、壁に固定する作業
- 仕上げ …… 塗装、あるいは化粧板の小口処理
このうち、素材選びで動かせるのは主に材料費だけだ。手間の3つは、素材を安くしても変わらない。「安い板にしたのに、見積もりがあまり下がらなかった」という話は、ここが理由になる。
素材で動く金額、動かない金額
板の種類で、材料費はこう変わる。安い順に並べる。
- ラワンやシナの合板 …… いちばん安い。塗装をすれば十分きれい
- 化粧板(ポリ、メラミン) …… 表面が硬く、水と汚れに強い。キッチンや洗面に向く
- 突板 …… 合板の表面に薄い本物の木を貼ったもの。見た目は無垢に近い
- 無垢材 …… 一枚の木。高い。反りや割れが出る前提で作る

もうひとつ、金額を動かすのは金物だ。引き出しのレールひとつでも、手で押し込む安いものと、指で触れると静かに閉まるものでは価格が数倍違う。引き出しの数が多い家具は、金物だけで数万円の差が出る。
大工工事と家具工事、どちらが安いか
同じ図面なら、多くの場合、大工工事のほうが安い。工房での製作と運搬が無いからだ。
ただし、得意な形が違う。
- 大工工事が向くもの …… 壁と一体の棚、階段下や小上がりの下など、家の構造に絡む収納
- 家具工事が向くもの …… 引き出しの多い家具、扉の精度が要る食器棚、塗装の仕上がりを重視する家具
大工が現場で作る棚は、壁の歪みに合わせて逃げを取れる。工房で作った箱は、寸法の精度と仕上げの美しさで勝る。どちらが上ではなく、何を作るかで決まる。

既製品と、どちらが安いか
「同じ幅なら既製品が安い」と言われる。量産の板と量産の金物で、量産の工場が作っているからだ。そういう場合が多いのは事実だ。
ただ、それで話が終わるなら、造作家具を選ぶ人はいない。
比べる相手を間違えない
置きたい場所の幅が1,350mmで、既製品の棚が1,200mmしかない場合。150mmの隙間をどうするか。
隙間を埋める板を作る、上の空きを塞ぐ、地震で倒れないよう壁に固定する。そうした「合わせる工事」を足すと、既製品と造作の差は縮む。壁との隙間にほこりがたまる、掃除機が入らない、といった毎日の小さな不満まで含めれば、逆転することもある。
比べるなら、既製品の値札と造作の見積もりではなく、既製品を納めるための工事まで含めた金額と造作の見積もりを並べる。
高い既製品、安い造作
既製品にも、一枚板のダイニングテーブルや、名の通った家具屋の食器棚がある。造作の何倍もする。
一方で、造作は「見えるところに金をかけ、見えないところは合板で作る」ができる。オープン棚を大工工事で作れば、既製品のラックより安く納まることも珍しくない。
つまり安いのはどちら、という答えはない。あるのは、その場所で何をしたいか、だけだ。
金額より先に決めること
ここまでは金額の話だった。ただ、実際の現場で最初に聞かれるのは金額ではない。その家具で、どう暮らしたいかだ。
暮らし方が、家具の形を決める
同じ「本棚がほしい」でも、中身はまったく違う。
- 本が増え続ける。壁一面が本で埋まってもいい …… 造作。棚板の高さを本のサイズに合わせて刻む
- 本は今の量で止まる。数年後には子どもの部屋になる …… 置き家具。動かせることが価値になる
- 本は少ない。飾りたいものがある …… 造作のニッチか、浅いオープン棚。奥行きを詰めて費用も詰める
同じ「食器棚」でも、毎日料理をする家と、週末だけの家では、引き出しの数も高さも違う。家具の形は、暮らし方から決まる。そこを飛ばして金額から入ると、安く作ったのに使いにくい、という結果になる。
造作と置き家具を、混ぜる
すべてを造作にする必要はない。すべてを置き家具にする必要もない。
- 動かさない、寸法が中途半端な場所 …… 造作
- 引っ越しに持っていきたい、何年かで買い替えたい …… 置き家具
- 壁一面の収納の、扉だけ既製品を組み合わせる …… 混ぜる
造作が効くのは、寸法が中途半端な場所と、地震で倒したくない大きな家具。ここに絞ると、予算は自然に収まる。
迷ったまま、相談していい
「造作にするか置き家具にするか、まだ決めていない」「予算がいくらなら足りるのか分からない」。この状態で相談に来ていいのか、と考える人は多い。
結論から言えば、迷いは、相談の材料そのものだ。決めてから来る必要はない。
工務という仕事
リノベーションの会社には、工務と呼ばれる役目がある。職人を手配し、材料を用意し、スケジュールを組む。そのうえで、要望に合わせて段取りを組み上げる。
「本が増え続ける」「数年後に子ども部屋になる」「予算はここまで」。そういう話を聞いて、造作にするか、置き家具にするか、混ぜるか、大工工事か家具工事か、どの素材か、を組み立てるのが工務の仕事だ。迷いをそのまま話してもらったほうが、組み立てやすい。
図面どおりにはならない
もうひとつ、先に知っておいてほしいことがある。
工事は、図面どおりには進まない。壁を開けると、下地が思った位置にない。配管が通っている。柱が図面より太い。そういうことが、普通に起きる。想定外は、予算と工期を苦しくする。
金額は契約の前に確定させる。それは変わらない。そのうえで、想定外が起きたときにどうするか。最初から現場の意見を共有しておくと、そのときの判断が早い。「ここは下地が無いかもしれない。無かったらこうする」を、着工前に一緒に見ておく。それだけで、現場で止まる時間が変わる。
だから相談は、早いほうがいい。迷っている段階のほうが、なおいい。
いまある家具を、造作に替える場合
新築ではなく、いまの家の置き家具を造作に替えたい人のために、あとから造作を入れるときの条件を置いておく。

壁の下地があるか
造作家具は壁に固定する。固定するには、壁の中に木の下地が要る。
日本の住宅の内壁は、石膏ボードが多い。石膏ボードは釘やビスが効かないので、その奥の柱や間柱、あるいは合板の下地にビスを打つ。下地の位置に合わせて家具の固定位置を決めるか、下地を足す工事を先にするか。どちらかになる。
マンションでもできるか
多くの場合できる。住戸の内側の壁や床に家具を固定することは、原則として問題ない。一方で、外壁や隣戸との境のコンクリート壁は共用部分で、穴をあけられないことが多い。その場合は、壁の手前に下地の壁をもう一枚立てて、そこに固定する。
管理規約で工事の届け出が要ること、工事できる曜日と時間帯が決まっていること。この2つは、先に確認しておく。
撤去と処分は、誰がやるか
古い家具の行き先を決めておく。自分で粗大ごみに出すのか、工事の業者に頼むのか。頼むなら、その費用が見積もりに入っているか。
まとめ
造作家具の費用について、分かっていることを並べる。
- 費用の中身は、材料、加工、取り付け、仕上げの4つ。素材で動くのは材料費だけ
- 引き出しが多い家具は、金物で金額が動く
- 大工工事は壁と一体の棚に、家具工事は精度と仕上げに向く
- 既製品と比べるなら、既製品を納める工事まで含めて並べる
- 高い既製品もあれば、安い造作もある。安いのはどちら、という答えはない
先に決めるのは金額ではなく、その家具でどう暮らしたいか。そこから、造作にするか、置き家具にするか、混ぜるか、が決まる。
その暮らし方が、まだ言葉になっていなくてもいい。迷ったまま話すところから、造作家具は始まる。



